無添加味噌って、「生味噌」じゃないの?
添加物が入っていないからといって、生味噌とは限りません!
本記事で「生味噌」を徹底解説します。
- 生味噌を理解したい
- 酒精を避けている
無添加の味噌を探すと出会う、「生味噌が良い」という情報。
「生きた味噌」、「本物の味噌」などと表現されますが、生味噌の見分け方を正しく理解できていますか?
無添加味噌を探すこと加えて、生味噌を見つけるの大変ですよね。
勘違いしやすいポイントを含め、生味噌を分かりやすく説明していきます。
本記事を読むことで、味噌選びに悩まなくなりますよ。
- 無添加生活5年目
- 病院管理栄養士として10年間の勤務経験あり
- 生活クラブ、パルシステム、らでぃっしゅぼーやの利用経験あり
生味噌とは?
早速、「生味噌」とはどんな味噌なのか、結論を述べます。
- 加熱処理されていない=酵母菌が生きている・酵素が働いている
あれ?「酒精が添加されていない味噌」、「バルブ付き容器の味噌」が生味噌じゃないの?
間違いではありませんが、100%正解でもありません!
誤解しやすいポイントですので、一つずつ理解していきましょう。
生味噌が誤解されるポイント
生味噌が誤解されるポイントは以下の3つです。
①酒精入りみそは、生味噌ではない
②バルブ付き容器の味噌が生味噌である
③速醸法で作られた味噌は生味噌ではない
「酒精入りの生味噌」も、「速醸法で作られた生味噌」もあります。
逆に、「バルブ付き容器でも、生味噌ではない味噌」があります。
速醸法??
味噌って加熱処理されるの?
速醸法とは、味噌の醸造方法の1つです!
だし入り味噌は加熱しないと作れません!
それぞれ見ていきましょう♪
①酒精入りみそは、生味噌ではない
酒精とはアルコールのことであり、添加する目的は、酵母菌の働きを抑えることです。
理解しやすいように、まずは微生物の役割を説明します。
味噌の発酵熟成には、主に「麹菌」、「酵母菌」、「乳酸菌」が働きます。それぞれの役割は以下の通りです。
味噌作りに必要な微生物と働き
- 麹菌:麹菌の酵素によって、米が分解される。
- 酵母菌:麹菌が出した酵素によって作られたブドウ糖から、※アルコールと二酸化炭素を作る。このアルコールは香り高い味噌を作る上で重要。
- 乳酸菌:乳酸菌が乳酸を生成することで、味噌のpHが下がり、原料独特の臭みを消すことに繋がる。
微生物をイメージしやすいように、下記の画像をお借りしたので参考にしてください。
出典: 木曽路物産株式会社
前記の通り、酵母菌の働きはブドウ糖からアルコールと二酸化炭素を作ること。
酵母菌の働きが活発なまま容器詰めすると、二酸化炭素の発生が続いて、容器の変形が起こってしまいます。
酒精は、酵母菌を眠った状態にし二酸化炭素の産生を抑えて、容器の変形を防ぐために添加される。
そもそも酵母菌は、自らアルコールを作り出します!酒精を添加しても、死にません!「生味噌の条件」である【酵母菌が生きている味噌】つまり、生味噌です。
②バルブ付き容器の味噌が、生味噌である
バルブ付き容器の味噌は、生味噌ってよく見かける!
確かに、バルブ付きの味噌は生味噌の可能性が高いです!
しかし、100%ではないんですよ~。
バルブ付き容器の味噌であっても、生味噌でない商品があることを、「酵素が働いているか見分ける方法」で詳しく解説ています!
バルブ付き容器は、二酸化炭素を排出する役割がある。つまり、酒精と同じ役割。
さらにバルブ付き容器は、二酸化炭素を排するだけではなく、酸素は外から取り込まない優れものなので、味噌の品質保持に役立ちます。
実際にバルブの写真を見てみましょう。赤い丸の部分がバルブです。
とっても小さな穴が開いていますね。この容器を製造するのにも、コストがかかります。
③速醸法で作られた味噌は生味噌ではない
「速醸法で作られた味噌は生味噌ではない」
これを理解するために、味噌の醸造方法を2つ説明します。
熟成方法は、「天然醸造」と「速醸法」!
味噌の熟成や発酵に微生物が必要なことは、「①酒精入りみそは、生味噌ではない」の項目で解説しましたね。
微生物には働きやすい温度があります。
速醸法は人為的に微生物が働きやすい温度にすることで、短期間で味噌が完成します。
天然醸造は、仕込み終わったら自然任せ。完成まで温度管理はしません。
2つの違いを下の表にまとめました。
温度管理 | 醸造期間 | |
天然醸造 | 自然に任せる | 3~4か月 |
速醸法 | 人為的に操作する | 6か月~1年 |
注目してほしいポイントは、両者の違いは温度管理のみということ!
速醸法であっても、微生物が働いて味噌が完成している!
速醸法で作られた味噌も、加熱処理されていなければ、「酵母菌が生きている」、「酵素が働いている」、生味噌です!
酵素の役割
生味噌の条件「酵母菌が生きている」に着目して、解説してきました。
次に条件の「酵素が働いている」を理解しましょう。
麹菌が出す酵素の代表は、アミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼの3つです。
出典:木曽路物産株式会社
この酵素たちが、米や大豆のでんぷん、タンパク質、脂質を分解し、発酵熟成が進みます。
イラストの吹き出しにあるように、酵素は麹菌がいなくても勝手に働きます!麹菌は、塩分濃度が高い環境に弱く、味噌が仕込まれてすぐ死んでしまいます。発酵熟成には、酵素が活躍しています。
加熱処理とは?
生味噌の条件は、加熱処理されていない=酵母菌が生きている・酵素が働いている状態。
これまで酵母菌と、酵素の解説をしてきました。
最後に、加熱処理についてお話しますね。味噌には、加熱処理されている味噌と、されていない味噌があります。
加熱処理をする目的は?
これまで、酒精・バルブ付き容器の役割を理解してきましたね。
加熱処理をする目的も、同じです!
酵母菌の二酸化炭素対策?
その通り!熱によって酵母菌を死滅させ、二酸化炭素を発生させないことが目的です!
酒精は、酵母菌を眠らせるだけだったけど、熱で殺しちゃうんだ!
生味噌を販売するには、これまで見てきたように、酒精を添加したり、バルブ付き容器を用意したりと、コストや管理が必要です。これは、酵母菌を生きたまま流通させのための手段です。
加熱処理で酵母菌を殺してしまえば、このような手間がかかりません。
酵母菌を殺すために、加熱処理をする!
加熱処理された味噌とは?
加熱処理をされた味噌とは、どのような味噌でしょうか。
加熱処理は、給湯器の中に筒をいれて、味噌を通過させるイメージです。
酵母菌は60℃死滅し、60~70℃で多くの酵素は活性を失う(働かなくなる)と言われています。
加熱処理の温度は不明です。しかし、流通している間に容器が変形してしまっては、クレームにつながるため、酵母菌をしっかり殺せる温度であることは、間違いないでしょう。
加熱処理が必須!だし入り味噌
だしを加えるために「加熱処理」が必須だということが、マルコメの研究開発記事に記載されていました。
味噌の中の酵素によってだしの旨味が分解されてしまうため、だしの味がしなくなるのです。そこで、開発チームは、味噌に熱を加えて酵素の活性を止めることを思いつきました。
マルコメの研究開発
酵素は、タンパク質でできています。加熱することで、形が変わってしまい働くことができなくなります。
生卵(タンパク質)に熱を加えると、固まって形が変わりますよね。同じことが酵素に熱を加えると起こるイメージです。
料理の手軽さを可能にした味噌の開発は、とても大変だったようですね。
消費者の要望から完成した「だし入り味噌」。
添加物が入っている上に、加熱処理もされている味噌。
どの商品を選ぶのか、理解したうえで自分軸で決めましょう!
生味噌・非加熱の表記
だし入り味噌は、加熱されているとわかったけど、他に見分けるポイントはあるの?
加熱処理されていない味噌の中には、パッケージに「生味噌もしくは非加熱」と記載がされているものがあります!
見たことないかも~
無添加を意識している方は、原材料を確認することに慣れていると思いますので、「生味噌」や「非加熱」も探し見てくださいね♪
実際の写真をお見せします。赤い丸に注目してください。
善光寺平は、非加熱(生みそ)と2つの表記をしていますね♪
こだわりを感じます!
生味噌の見分け方
何度も繰り返しますが、生味噌とは「加熱処理されていない味噌=酵母菌が生きている・酵素が働いている味噌」です。
「バルブ付き容器」、「生味噌・非加熱の表記」を解説しました。最後に「酵素が働いている味噌」についてお話しします。
- バルブ付き容器(※100%ではない)
- 生味噌・非加熱の表記
- 酵素が働いているか
「バルブ付き容器」、「生味噌・非加熱の表記」を忘れてしまった方は、クリックして確認してくださいね。
酵素が働いているか見分ける方法
ここでは酵素が働いている味噌について深堀りします。
パッケージのどこを見れば、酵素が働いているか分かるの?
結論、商品パッケージだけでは酵素が働いているかを、見分けることはできません。
そしたらやっぱり、「バルブ付き容器」かを確認するしかないの?
バルブ付き容器も参考にはなりますが、100%ではありません。
実際に、酵素が働いていない、バルブ付き容器の味噌はあります。
どうしたらいいの~?
酵素が働いているか、実験で確認できます♪
マルモ青木味噌醤油醸造場さんを参考に、実験をしたので紹介しますね!
生味噌の酵素実験
用意するもの:耐熱コップ、片栗粉10g、片栗粉を溶かす水8ml、熱湯50ml、スプーン
- 耐熱コップに片栗粉を入れ、水で溶かす
- ①に熱湯を入れて、手早くスプーンで混ぜる
- ②に味噌をスプーン1杯分入れて、かき混ぜる
片栗粉はでんぷんです。酵素が働いている味噌をくず湯状の片栗粉に入れると、酵素の1つであるアミラーゼがでんぷんを分解して、サラサラになります。
「サラサラになる味噌⇒生味噌」「サラサラにならない味噌⇒生味噌ではない」ということです!実験結果を下の表にまとめした。
商品名 | 日本国産 | 匠御膳 | 匠 | 銘醸 | 玄米味噌 | 十割こうじみそ | アルコール入り) | 善光寺(
入れる前 | |||||||
結果 |
私がおすすめしている味噌は、くず湯状だった片栗粉が、すべての商品でサラサラに変化しました。
おすすめ味噌を詳しく知りたい方は、下記の記事も読んでみてくださいね。
実験をした結果、バルブ付きの味噌にもかかわらず、酵素が入っていない商品がありました。
本当にドロドロのまま!
この商品は、無添加の生味噌として、よく紹介されています。容器にバルブはついていますが、商品に「生味噌や非加熱」と表記はされていません。なので、偽りではないんです……。
この商品のように、大手メーカーでは加熱処理+バルブ付き容器で販売することがあるそうです。加熱処理が不十分な可能性を考慮して、バルブ付き容器にしてるみたいです。
実験で証明!酒精入りでも生味噌
生味噌の酵素実験で使用した、「酒精入りの生味噌」は「マルモ青木味噌醤油醸造場 善光寺平(白)」です!
製造メーカーのマルモ青木味噌醤油醸造場さんは、環境に配慮した循環型の味噌作りをしています。無添加味噌や有機玄米味噌など商品は様々!「酒精入りの善光寺平」も、味に深みがあって美味しいです♪
「善光寺平」の詳細を載せておきます。
- 購入先:マルエツ
- 原材料:米(国産)、オーガニック大豆(中国産)、食塩/アルコール
- 価格:458円
- 内容量:1㎏
- 特徴:酒精が添加されているが、酵素が生きている「生味噌」
中国産オーガニック大豆は、マルモ青木味噌醤油醸造場の子会社でしっかり管理されている。以下、実際に商品パッケージに記載されている写真です。
信頼できるメーカーの味噌を買いましょう!
生味噌が良い理由
「生味噌」は、酵母菌が生きているから、腸活になるの?
結論、腸活という点で「生味噌」と「加熱処理されている味噌」に差はないと思います。なぜなら、食べた酵母菌は胃酸で死んでしまい、腸に届く時には「死菌」になっている点で同じだからです!
※添加物が腸に与える可能性は、除外して考えています。あくまでも味噌に含まれる微生物の差だけに着目した意見です。
それなら「生味噌」を勧める理由は?
私が考える「生味噌」のメリットは、3つです♪
- 安心できる原材料の可能性が高い
- うま味UP、消化しやすくする酵素の力
- 風味がよい
一つずつ説明しますね。
安心できる原材料の可能性が高い
「生味噌」を販売するには、これまでお話ししたように、酒精を添加したり、バルブ付き容器を用意したりすることが必要です。
その点、コストや管理に費用がかかるといえます。つまりコストをかけても、「生味噌」を販売したいというメーカーのこだわりが感じられます。
その証拠に、私がおすすめしている味噌はすべて「生味噌」であり、原材料の大豆と米は国産もしくは外国産有機です。
安心できる味噌を選びましょう!
酵素の力で消化しやすさUP・うま味UP
繰り返しですが、生味噌は「酵素が働いている味噌」です。
酵素が良い効果をもたらしてくれます♪
「消化しやすさUP」は、【お肉の味噌漬け】を例に考えてみましょう。
《お肉の生味噌漬け》
お肉に生味噌を塗って、しばらく漬け込みます。
その間に生味噌の酵素が、お肉のでんぷんやたんぱく質などを分解してくれます。
焼いて食べる時には、でんぷんはブドウ糖・たんぱく質はアミノ酸に一部分解されている状態。
《そのまま焼いたお肉》
私たちが持つ自分の酵素(例:唾液アミラーゼ、胃ペプシンなど)で初めから分解しなければならない。
あくまでもイメージですが、酵素で分解する割合を表にしてみました♪
生味噌漬け | そのまま焼いたお肉 | |
生味噌の酵素 | 20% | 0% |
自分の酵素 | 80% | 100% |
※数値はイメージです。根拠はありません!
「うま味UP」は、ご飯とお砂糖を比較して考えてみましょう。
突然ですが、「ご飯を食べた時」と「砂糖を食べた時」どちらが甘く感じますか?
砂糖!
そうですよね!ご飯と砂糖の違いを、表とイラストで考えてみましょう!
ご飯 | 砂糖 | |
状態 | デンプン | 二糖類(ショ糖) |
ブドウ糖の数 | ブドウ糖がたくさんつながっている | ブドウ糖が2個つながっている |
味の感じ方 | 弱い | 強い |
出典:株式会社玄米酵素
私たちが、味を感じやすいのは、小さく分解された状態です。
ご飯もよく噛んでいると、甘くなってきますよね。唾液のアミラーゼによって、デンプンがショ糖やブドウ糖に分解された結果です。
酵素によって、分解されたブドウ糖やアミノ酸をうま味として感じる!
生味噌の効果は、塩こうじの効果と似ていると思います♪
酵素の効果がわかりやすく説明されているので、マルコメさんのホームページを掲載しておきます。
下のグラフは、同じ条件で塩こうじに付け込んだ肉の軟らかさを比較した実験結果です。
出典:麹の酵素とそのはたらき
すべての肉で、塩こうじに付け込んだ方が、破断応力(=切れるために必要な圧力)が低下していますね。つまり、軟らかくなっているということです。
味噌の酵素・塩こうじの酵素は、どちらも麹菌が出した酵素です。そのため、味噌漬けでも、塩こうじと効果が期待できるのではないかと、私は考えています!
風味がよい
味噌の香りを作り出しているのも、また微生物たちです。
酵母菌や乳酸菌が産生したアルコール・有機酸・エステルが味噌の香りです。
みそ汁は風味が落ちるから、火を止めて、60℃程度で味噌を溶いた方が良いとよく言われますよね。加熱処理された味噌は、生きた味噌より風味が劣ります。
繰り返しですが、酵母菌の耐熱温度60℃程度、60~70℃で酵素活性は失われますます。つまり、加熱処理された味噌はこの70℃より高い熱が加えられているのです。
そのため、独特の焦げだような「加熱臭」がすることもあります。
生味噌にまつわる疑問
これまで解説したことを踏まえて、よくある疑問を解決しておきましょう。
生味噌にまつわる疑問
- 生味噌とは?
-
加熱処理されていない味噌。
- 生きている味噌とは?
-
酵母菌が生きている味噌。
- 天然醸造味噌とは?
-
発酵熟成が速く進むよう、人為的に温度管理をしていない製造方法。自然の力によって作られた味噌。
- 酵母菌が生きている味噌とは?
-
生味噌。
- 酵母と酵素の違いは?
-
酵母は菌。酵素は麹菌が出すもの。
味噌の選び方
味噌の選び方も、説明しておきますね。
- 原材料がシンプル(大豆、米、塩)
信頼できるメーカーなら酒精(アルコール)入りも〇 - 産地は国産、もしくは有機
酒精以外の添加物は、入っていないものを選びましょう!
生味噌まとめ
生味噌を徹底解説してきました。最後に整理しましょう。
生味噌とは、加熱処理されていない、酵母菌が生きている・酵素が働いている味噌
酒精=アルコールが添加されていても、酵母菌は静菌されただけなので、「生味噌」でしたね!
生味噌の理解が深まりましたか?
本記事が、味噌選びの参考になると幸いです。
最後まで、お読みいただきありがとうございました。
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